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平成29年総会・講演&ワークショップ

(桜蔭会神奈川支部便り 第46号より抜粋)

こんなこいるかな 伸ばそう!二つのソウゾウリョク

講師 有賀 忍

「こんなこいるかな」誕生裏話

「こんなこいるかな」をご存知でしょうか。30年ぶりに新装出版されたキャラクター絵本です。でも、しっかりとしたコンセプトのもとに作られております。その狙いと制作過程をお話しします。

「こんなこいるかな」は1986年秋から、NHKおかあさんといっしょで放送された一分たらずのアニメーションです。NHKの二歳児テレビ番組研究会(発達心理学の見地からお茶大の内田伸子先生も参画されました)の研究成果を踏まえ、幼児向けのアニメが制作されました。

「こんなこいるかな」には教育目標があります。①世の中には色々な人がいることを理解させる②人にはそれぞれに良さがあることを理解させる③行動的特徴ばかりではなく、心理的な特徴も理解させる、の三つです。まずはキャラクターの創作です。決定はコンペの形で行われました。運良く有賀のキャラクターが選ばれたのですが、実は大変悩んだのです。「アニメ一話に一体のキャラクターのみ登場させ、ストーリーを作れ」と命じてきたのでした。

キャラクターは、言わば個性の表現。個性を際立たせるためには相手役が必要です。性格は、比べるもの(ニュートラルな存在)があってこそ顕著に表現できるものだからです。例えをあげます。いつも親切な「はっぴ」という子。この子の優しさを表現するためには、他者がどうしてもいるのです。他者に対しての行為で優しさを表せるからです。考えに考え、二人の無性格な子を存在させることにしました。小犬のペロと小猫のミャーです。ペロとミャー二人のニュートラルな存在を設定して、有賀の「こんなこ」お話作りは流れに乗っていきました。ですからペロ、ミャーは「こんなこ」の隠れた主役と言えます。

放送が始まったのは1986年の秋のことですが、その前に「いやだいやだのやだもん」や「いたずらっこのたずら」の試作版が制作され、幼児がどう反応するか、のテストが行われました。幼児に同時に複数のテレビ映像を見せ、その子の目がどう動くかをディレクターが別室で観察するという手のこんだ実験です。結果は、「やだもん」や「たずら」が注視率で圧倒、スタッフは自信を持って放送を開始したようです。性格を一つに絞って表すキャラクターの分かり易さが好まれたのでしょうか、人気が出て絵本も全部で44巻出版されました。

現代は知育偏重時代だと思います。行き過ぎた商業主義、競争社会です。幼児にも成果主義の波が押し寄せてきています。子どもが可哀相です。幼き時代ぐらいは大らかな気持ちで育てたいですね。ぼくは「こんなこ」で、比べない、叱らない、成果を求めない、自由を約束された世界……言わば、『子どもの精神の解放区』を表現したかったのかもしれません。

あるお母様(発達障害のお子様を持つ)からの手紙には絵本が、『温かく包んでくれるお守りのような存在』と書かれていました。一人一人の個性を優しく認める絵話が、見ていて安心できたのだと思います。

「こんなこ」の歌詞に「きみがいるからおもしろい」というフレーズがあります。ぼくは、この言葉が好きです。「きみがいるからおもしろい」。そう、一人一人がみな主役でなくてはいけません。「百人いたら百の個性」、「千人いたら千の輝き」であってほしいのです。

「すべての子にそれぞれ素晴らしい所がある」……これが「こんなこ」のエッセンスです。

子どもの想像力と創造力を伸ばす六つのアドバイス

①手先を使う遊びの勧め。身体機能のうち手先を使う遊びを通して微細な運動機能を鍛えよう。

②廃物を利用しよう。普段ゴミとして捨ててしまう物の活用を考える。その辺のあり合わせの素材を使用して応用力、工夫する心を養う。

③待たせよう。何でも簡単に手に入るのはダメ。待つ間に想像する。期待感が手に入れた時の喜びを増幅する。手に入れたものに愛着が沸くようになり、物を大事にするようになる。

④与えすぎない。我慢力を育みたい。足りないことにより、それを克服する手立てを考える。応用力が培われる。

⑤ブリコルールを目指そう。ブリコラージュとは「身の周りにある道具やあり合わせの材料を使って何か作ること」です。ブリコルールはブリコラージュする人のことです。創意工夫人間に!

⑥「嘘のない期待」をしよう。温かな心持ちで誉めたり、エールを贈る……何気ない一言が大きくなってその人に良いように作用する。人は期待された通りの結果を出すことがある。子ども時代は自己肯定感に浸らせたい。人生を勇気と誇りを持って歩んでもらうために。

ワークショップ

民芸玩具のカタカタからヒントを得た不思議カードを作ります。ボール紙にケント紙の帯を巻きます。三枚の帯の貼り方にポイントがあります。ボール紙の代りに、牛乳パックを使うと強度に優れたものができます。このカードは色々な楽しみ方ができます。「泣いた顔→笑った顔」を二組描いてもいいし、何も描かず白紙のままですと、挟んだ物が瞬時に消えるという手品カードになります。今日の製作は「こんなこいるかな」バージョンです。12人のキャラクターシールを自由に貼ってください。『ミニこんなこカタログ』のできあがりです!

(有賀先生から講演の要約をお寄せいただきました。)

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